BST-072 (25)

15.

 リハビリは1カ月と言われたが、美希の通い妻を思わせる甲斐甲斐しい看病の賜物かプロデューサーは結局3週間で退院できる事になった。
 社長には「散々心配かけおってからに」と言われたし、小鳥には逆流しそうになるほど天麩羅を食わされたし経理部には軍歌を歌われたし律子には2発も張り手をもらったし営業部にはメロンを食われた。
くそうくそうと漏らしながらリハビリをするプロデューサーの様子は正直に言えば笑いを誘うもので、意識を取り戻してから見舞いにきた営業部の同期連中には指まで指されて爆笑された。
後で必ずシメてやると心に誓う。



「…」
「何だねその不服そうな顔は。君の祝いの席なのだからもうちょっと喜びたまえよ」
「…なんで、ここなんですか?」
 プロデューサーの疑問も尤もではある。
祝いの席を用意したから美希君と一緒に着いて来たまえと言われてホイホイ付いて行ってしまったのがそもそもの間違いだった気もする。
 退院した後にプロデューサーは自分の机にうず高く積まれた書類の山を見た。
掘り出してみたらAランクに上がった美希のプロモーションの他にもあろう事か小鳥や律子向けの事務書類や経理の書類も混じっていて、抗議しようと視線を上げたら小鳥がこっちを向いてにっこり笑っていた。何て事だと本気で思う。
 結局記念すべき復帰初日は書類との格闘で終わりを迎えた形になったが、明日以降もあの書類の山に加えて毎日のように飛び込んでくる美希のプロモーションも考えると頭が痛くなる。
加えれば美希のラストライブに向けた仕事も詰まっていて気が重いことこの上ない。
 おまけに社長に連れてこられた今日の締めは赤提灯丸出しの居酒屋だった。
もうすぐ年度の締めだからか居酒屋はやけに混んでいて、地下の個室のはずなのに上の階の足音は響いてくるし横の個室からは宴会をやっていると思しき嬌声が聞こえてくる始末だ。世の中の不運を心から嘆く。
「いや、もっと良い所でもよかったのだがね。ここの方が馴染みがあるだろう?」
 馴染みも何も前の事務所はここの上だ。
毎日通勤していたし、残業続きで死ぬほど疲れて帰ろうとした時に顔面を真っ赤に染めた中年のサラリーマンと出くわした時は喧嘩でもしたのかと思った。
 事務所が今の借りビルに移転してからはこの店に近寄ることもなくなってしまったが、プロデューサーは今でも前の事務所の見取り図を正確に思い出すことができる。
「…いやまあ馴染んでるって言えば馴染んでますけどね。ここ、たるき亭じゃないですか」
「不満かね」
「…社長、俺が酒飲めないって知ってますよね?」
「付き合い程度にも飲めない事はなかろう。見たまえ、美希君はすでに飲み物を選んでいるぞ」
 横を見ると、美希はキラキラした目でドリンクメニューを捲っている。溜息すら出ずにプロデューサーは社長に向き直り、
「そりゃあソフトドリンクですもんね。ここ確かノンアルコールって種類そんなにないじゃないですか」
 入社1年目の頃の苦い経験を思い出す。
飲み会の場所を予約するようにという重大な任務を仰せつかったプロデューサーは「近いから真下だけどいいか」という非常に安直極まりない店の選択をし、アルコールの種類豊富なメニューを見て狂喜した小鳥と社長の酒乱ペアに潰されたことがある。
助けを求めようにも同期達は陸揚げされたマグロのような恰好で死んでいるかトイレ目掛けて北島を思わせるダイビングを敢行しているかのどちらかで、グラスが空いていればすかさず酒を入れようとする小鳥対策にソフトドリンクの見た時はまさしく南極に置き去りにされたタロとジロの気分になった。
 と、遠くを眺め出したプロデューサーの視界の隅で美希の眉が動いた。
「ねえねえプロデューサー、ホッ」
「ダメ」
「…ピーって好き? って聞こうと思ったのに」
 嘘付け。
ドリンクメニューはアルコールもノンアルコールも一纏めになっている形式のものだが、美希が見ているページは見事に「ホッピー」と書かれていた。あの目の輝き具合からするに美希はきっと良からぬ事を企んでいたに違いない。
未成年が飲酒など以ての外だし、もしまかり間違って美希がイケる口だったら過去の二の舞である。
 まったく―――プロデューサーは思う。
今日は美希の久しぶりのオフの日だからこそプロデューサーは見たくもない書類とK-1を決め込んだというのに、何故か美希は定時に事務所に現れてお茶汲みの手伝いをしていた。
髪を切ったからなのかは分からないが、本当に美希は大人っぽくなったと思う。兄貴分としては感慨深い事この上ない。
これも何度か話に聞いた『メカ千早』なる人物のおかげだろうか。
礼を言っておきたいしどんな奴か見てみたい―――そう思って美希に何度か『メカ千早』なる人物が今どこにいるのか聞いているのだが、美希はその都度決まって「遠いところ」としか言っていない。
 本当に、全く、
「…ちょっとは大人っぽくなったかと思ったら…」
 不覚にも昼間はそう思ったが何のことはない、根っこは美希のままだった。
何となく残念な気もするし変わらずにいてくれた美希の事を嬉しくも思う。
 溜息のような呟きはばっちり聞こえていたらしく、美希は首が拉げるのではないかと思う程のスピードでプロデューサーを向き、
「ホントっ!? ミキ、大人っぽくなった!?」
「はいはいオコチャマはウーロン茶でも飲んでなさい。お、美希牛乳あるぞ牛乳」
 無言のグーをスウェーでかわすが、美希は拳の軌道を変えてプロデューサーの側頭部を捉えた。割とガチで痛い。
半分以上は本気で痛がっていると、社長の笑い声が聞こえた。
「その様子だともう本当に体は大丈夫なようだな。安心したよ」
「大丈夫っていうか痛ぇっ、美希グーはやめろグーは!」
 ボカボカとプロデューサーを殴る美希に苦笑を洩らし、社長は通りかかったホールに向かって手を上げた。
お待たせしましたー、ご注文はお決まりでしょうかー。
「ええとだね。彼女にはウーロン茶と、彼にアルコール軽めのものを。それと、私にはホッピーをひとつ」
 その他に3人で食いきれないのではないかと思える量の注文をすると、ホールは元気のいい挨拶をしながら厨房へと走っていった。
 さて、と一息つき、社長はいまだ暴虐の最中にいるプロデューサーに真正面から向き合った。
「料理が来る前に真面目な話をしたいのだが、いいかね?」
 今までの柔和な姿勢から打って変った真剣な声に、プロデューサーは両手のガードを下ろして社長の方を向いた。
「あの、社長、その前に、」
「何かね」
「…今日、小鳥さんから聞きました。その、俺の入院の手配とか費用とか全部社長がやってくれたって。…済みません、ご迷惑をおかけしました」
 社長の顔から色が消えた。
美希はグーを下ろし、その様子を静かに見ている。
プロデューサーはまっすぐに社長を見ていて、プロデューサーの神妙な視線を浴びた社長は一つだけ溜息をついた。
「…全く半年も入院しおってからにこのバカ者め。しっかり働いて返したまえよ?」
 社長のニヒルな笑みにプロデューサーは苦笑を洩らす。敵わないと思う。
と、プロデューサーはそこで左肘を突かれているのに気が付いた。
横を見ると、美希が妙にまっすぐな視線をプロデューサーに向けている。
「プロデューサー、違うの。プロデューサーはミキの事庇ってくれたんだよ。ホントに謝らなきゃいけないのは、ミキなの」
 そう言って、美希は神妙な面持ちで社長に頭を下げた。
「ミキ、いろんな人に迷惑かけちゃった。―――社長、本当にごめんなさい」
 しばらく頭を下げていたが、足音と嬌声しか聞こえてこなかった。
恐る恐る頭を上げると、美希の視界に社長の呆けた顔が飛び込んできた。横を見るとプロデューサーも似たような表情をしている。
地雷を踏んでしまったかと思う。
「…あの、」
 美希のおどおどとした声に我を取り戻したのか、社長はまるでいつかの誰かのように上を向き、次いで右と左を交互に見て、次に美希の目に入った社長の顔には穏やかな笑みがあった。
「―――私は、君たちの親のようなものだからな」
 実にいいタイミングでホールがグラスとジョッキを合わせて三つ持ってきた。
やや乱暴な手つきで社長はホッピーのグラスを手前に引きよせ、烏龍茶のジョッキを美希の前に、ジョッキをプロデューサーの前にそれぞれ押した。
が、3人が3人とも目の前の飲み物に手を付けようとしない。
「…社長、それで、真面目な話って言うのは」
「ああ」
 通しが持って来られた。神妙な表情を浮かべた3人に完全に腰が引けた哀れなホールが転がるように逃げていく。
「…君たちの、今後についてだ」
 やはりか、とプロデューサーは思う。
意識を取り戻してプロデューサーがまず最初に確認したのはカレンダーだった。長くてもせいぜい1ヶ月くらいだろうと踏んでいたのに実際は半年も寝ていたらしく、大慌てで美希に聞いたらもうとっくにAランクだという。
何となく寂しくもあったが、それ以上に美希がAランクに上がれた事は単純に嬉しい。
 嬉しいが、もちろん、
「…タイムリミット、ですもんね」
 社長はゆっくりと頷いた。
 765にある鉄の掟はいくつかあるが、そのうちの最も動かしがたい掟は「同一プロデューサーが同一アイドルを受け持つのは1年」というものだ。
事故のショックで記憶がイっていないなら、プロデューサーが美希と千早のユニットを受け持ったのは去年の4月だ。
もうすぐ3月も終わりを迎えるし、昨年の春には社屋の前で見事に咲き誇っていた桜の蕾は徐々に綻びを見せ始めている。
「うむ。ラストライブの会場は、もう決まっているんだろう?」
「…うん。二人で決めたの」
 プロデューサーではなく美希が頷いた。ドームだよと繋げると、社長は一つ大きく頷き、
「実はね、今度また社屋を移そうという話をしていてね」
「―――は?」
 プロデューサーの間抜け面に社長はうむ、と頷き、
「美希君はAランクになった。765としてはAランクアイドルの輩出は二人目だし、今度帰ってくる千早君は海外でも相当に名前が知れている。今の事務所では来客の際に何かと手狭でね、思い切って自社持ちの建物に移ろうと考えているんだ」
「帰ってくるの!? いつ!?」
 膝立ちになった美希の大声に驚くそぶりもなく、社長は冷静にラストライブと同じ日付を伝えた。
「だが、時間の方はまだ飛行機が取れていないらしくてね。間に合うかどうかは分からないと言っていたよ。気を落とさないでくれたまえよ?」
 すとんと腰を落とし、美希は一つだけ頷く。
「―――で、社屋を移す話が美希の今後のプロデュースにどう影響するんです?」
 プロデューサーの冷静な声に所長は再びうむと頷き、
「世知辛い世の中でね、何をするにも金は掛かる。もちろん自社ビルを建てる費用くらいは何とかするが、何事にも担保というものがあってだね」
「担保ですか」
 社長は黙って頷いた。
要するに―――プロデューサーは思う、自社ビルを建てるにあたって765は金融機関から借入をしたのだろう。
あるいはまだ借入そのものはしていないのかもしれないが、とにかく纏まった金を借りるなら返済能力を見せなければならない。
机の上の書類の山も同じように考えることができる。プロデューサーは小鳥たちから「時間」を借り入れ、その担保として「仕事」を押し付けられたのだ。
 が、その例からしても分かる通り問題なのは「何を担保にしたか」であり、おそらく社長はその辺りの話をしようとしているのではないだろうか。
しかし、それが美希の今後のプロモーションにどう影響するかが分からない。
まさか目の前のタヌキは「美希君を質に入れようと思う」とか抜かしたりはしないだろうか。
「…で、何でその話をするんです?」
「話を最後まで聞きたまえ。借入の話は上手く行ったし、来春には着工する予定だ。完成したら今までの仮事務所からは考えられない広さになる予定でね」
「…そうなの」
 話がでかすぎるし自分に直接関係があるとは思えないという美希の返答に社長はうむ、と相槌を打ち、
「この決断は少々性急かもしれん。だが本来、担保とは将来への期待を込めたものだ。そこで私もひとつ将来に向けて担保をとろうかと思ってな」
「…はあ」
 プロデューサーの口から溜息のような相槌が出た。
まったく話の要領が見えない。さっきから社長の話は飛びに飛んでいて追いつくのに精一杯だ。
美希の今後のプロモーションについての話だと思ったら突然自社ビル建設の話になり、とどめには担保を取ると来た。
大体にして担保を取るという事は誰かに何かを借り入れさせるという事だ。
理解しろと言う方が酷ではないのか―――そう思って社長を見ると、社長は口元ににやにやとした笑みを浮かべている。
「分からんかね?」
「残念ながら全く」
 プロデューサーの実に率直な意見に社長はため息のような笑みを零した。
「私の貸し出し担保というのはだね、本来1年間であるべきプロモーションクールを延長させる―――という事だよ」
「それって、」
 プロデューサーの驚いた声に、社長はにんまりと腹に何かを隠していそうな笑みを作った。

「君は実質的にはまだ半年しか美希君をプロデュースしておらんからな。君さえよければ、来年一年間、君にもう一度美希君をプロデュースしてもらおうと思っとる。どうかね」

 美希が生唾を飲み込む音がすぐ横から聞こえた。
が、プロデューサーは美希のすぐ横で難しい顔を作り、次いで社長に口を開いた。
「…律子は、どうなるんです?」
 プロデューサーが寝込んでから半年というもの、律子はプロデューサー代理として相当に頑張ってくれていたと小鳥から聞いている。
美希のプロデュースをもう一年やるのは全く構わないしむしろ嬉しいのだが、これまで頑張ってきた律子は今後一体どうなってしまうのか―――そう思うプロデューサーの目の前で、社長が実に邪悪な笑みを浮かべた。
「働いて返せと言ったろう? 律子君には、将来プロデューサーとして活動したいという希望があるそうだ。うまい具合に千早君もまもなく帰ってくる予定だし、丁度いい機会かと思ってな」
 凄まじく嫌な予感。
「分かったようだな。私が貸し付ける相手は君、担保は美希君のさらなる上位ランクへの到達と律子君の監督指導。…どちらか片方だけというのは、もちろん認められんよ」
 このタヌキめ―――プロデューサーは思う。結局とんでもない貸し付けをされる事になってしまった。
美希はすでにAランクであり、『さらなる上位ランク』とは要するにアイドルランク最高峰のSランクの事ではないのか。
 加えれば確かに律子の行ったプロモーションはまだまだ脇があまい物もあり、なし崩し的にプロデューサー代理を務めていた律子にはまだまだ教えなければならない事が山ほど
「ね、プロデューサー」
 頭を抱えたプロデューサーの横で、美希が神妙な面持ちでプロデューサーを覗き込んでいた。
弱りに弱った視線を送ると、美希は一つ咳払いをして、
「ミキ、頑張る。プロデューサーのお手伝いもするよ。だから、」
 美希は真剣な眼差しでプロデューサーを見ている。そういう顔をされると弱い。
 意識を取り戻してから退院までの間美希は毎日のようにリハビリを手伝ってくれていたし、寝ていた間もちょくちょく見舞いに来てくれていたらしい。
「―――さて、どうするかね?」
「プロデューサー」
 社長と美希の視線がプロデューサーに集まったところで、タイミングよく料理の第一弾が運ばれてきた。
第一弾のくせに夥しい量の料理を目の前に、プロデューサーは強烈な二択を迫られる。
この条件飲んだら真面目に死ぬんじゃなかろうか。そう思っていたら、美希からダメ押しのような声が聞こえた。
「…ダメ?」
 あーもう。
「…分かりました。やりゃあいいんでしょやりゃあ! やったろうじゃないですか!」
 やけっぱちな声を上げた次の瞬間、プロデューサーは美希に押し倒されんばかりの勢いで抱きつかれた。
倒れそうになる体を何とか右手で支えて踏み留め、プロデューサーはそこに社長の妙な顔を見た。
 ホッとしたように見えた。
「君なら、そう言ってくれると思っとったよ。もうすでに投機筋にはリークしてしまっているからな、今更引っ込みはつかん」
 変な事を聞いた。
「投機筋?」
 そこで、社長は悪魔が笑ったらこんな顔をするのではないかと思える笑顔を作ってプロデューサーの顔を見た。
「…なに、私は家族を守るためなら結構何でもやるのだよ」
 


「…やられた」
 社長室の机の前で、黒井はそう呟いた。
黒井の机には大型のラップトップモニタが鎮座していて、モニタの中にはグラフチャートが蛇の歩行を思わせる推移を描いている。
問題なのはその蛇の歩き行く方向であり、厄介な事に蛇は右上に向って歩を進めている。
蛇の頭は今日の日付で止まっていて、蛇の左上には「765プロデュース株式会社 株価情報」と今日の日付が書かれていた。
 765が如月千早の帰国と星井美希の活動継続を表明してから765の株価チャートは鰻登りだ。
黒井は懐から煙草を取り出して火を付け、パソコンのモニタ上に765プロの近い将来の株価予想を表示させて、そこで溜息をついた。
「…やられた」
 まったく本当にとんでもないタヌキだ。モニタに表示した765の株価予測は将来的にも安定して上がっていくと表示している。
この間の古株買収の時に相当な資金を使ってしまっていて、今の財政体力では美希を手に入れるための最後の手段として取っておきたかった企業買収も暗礁に乗り上げた形だ。
 それなのに、黒井の顔には凶悪な笑顔がある。
まるでこうなった事を楽しんでいるかのような気配すらある。
「それでこそだ」
 それでこそだと思う。
美希も765も簡単に手に入ってしまっては面白みがないし、ここまでコケにされて黙っているつもりもない。
今までもそうしてきた。
今回もそうできないという理由は何一つもない。
 欲しいものは、叩き潰して奪うまでだ。

 黒井はもう一度ニコチンを肺一杯に吸い込むと、入口の傍に立っていた秘書に向って口を開いた。
「面接、明日だっけ?」
 秘書は慇懃に、
「明日の13時と15時、第4会議室を押さえてあります」
 よろしい、と黒井は大きくうなずいた。
そうだとも、ここまでコケにされて黙っているつもりなどない。
向こうがその気なら、こっちは向こうの土俵で765を打ち負かしてやろう。そのための資源も人材もこちらにはいくらでもある。
 後悔させてやろう、と黒井は思う。
「俺も立ち会う。構わねえな?」
 そう言って、黒井は秘書の返事を待たずにデスクの引き出しから茶封筒を2枚引き出した。
それぞれの茶封筒には「社外秘」の印が押されていて、ひっくり返して出てきた履歴書の写真を黒井はまじまじと眺めた。
「…いいぜ、やってやろうじゃねえか」
 ほくそ笑み、黒井はモニタの電源を消して履歴書を乱暴に机の上に置いた。
 置かれた履歴書の氏名の欄の一つには『我那覇 響』、もう一つには『四条 貴音』と書かれている。



SS置き場に戻る      BST-072に戻る              その24へ      その26へ

inserted by FC2 system