ロストワン (14)

 時間通りに最後の曲を歌い、アンコールを3曲ほどこなし、それでもなお会場に残り続けるファンたちの矯正は伊織がプロデューサーの車のドアを閉めてようやく聞こえなくなった。
プロデューサーは黙って伊織に冷えたオレンジジュースを渡し、物も言わずにエンジンキーをぐるりと回す。
「お願い」が具体的にどこで何をするかとまでは言っていなかったが、プロデューサーから「あそこでいいか」と聞かれた辺りおそらくプロデューサーも伊織の「お願い」が何なのかは当たりが付いているのだろう。
ええ、と言葉少なに返すと、プロデューサーは「今日のは派手だぞ」という危険な単語を実に愉快そうな口調で言って関越を都心方向に走行し、しかる後に首都高に乗り換えた。
迷いなくハンドルを切るプロデューサーの動きには帰社する素振りは全くなく、伊織は手持ち無沙汰にカーステレオを弄ってスピーカーから流れ出たろくでもない声に眉を顰める。
「何でこれなのよ」
「いいじゃん別に俺が何聞いてたって。なんだいおりん恥ずかしいか?」
 恥ずかしいというよりは聞いていて悲しくなる。
イジェクションボタンを押してステレオから吐き出されたのは見るも惨たらしい文字の「いおりんの嬉しハズカシ成長の記録〜ボイス編〜」である。しかもかなり初期のものだ。
まだ何も知らないガキだったころの声を聞いても嬉しくないし、プロデューサーにはせめて最近の曲を聞いてほしいとは思う。
 何故か、など、知れ切っている。
 プロデューサーは今はもう「プロデューサー」ではない。
セコンドの職はステージでアンコールを歌いきったあの時にその職を終え、今のプロデューサーはいちファンという位置づけだ。
ファンに昔の歌を聞かれることはやぶさかではないが、それにしたってこのMDに収録された声は伊織にとっては恥部である。
―――あれ、
 白いセダンが混んではいない湾岸線をぶっ飛ばして行く。
セダンの運転席で上機嫌にハンドルを握るプロデューサーはそこでヒヒヒヒヒと笑う。
「今でも思い出すんだけどさ、」
「―――何を」
「いや、Dランクの時のボイススタジオ。あん時のパンチは結構効いた」

―――おう。1か月前の伊織の声だな。
―――なっ、何で採ってるのよそんなもの! 消して今すぐ消して速攻で消して何もかも消して。

「…そうね、私も思い出すわ。あんたが救いようのない変態だってあの時気付いたのよ」
 プロデューサーは再びイヒヒと不審者丸出しの笑い声をあげ、アクセルを踏み込んだ。
とたんに車が急加速し、トンネルと防音壁に両端を囲まれた道路がびゅんびゅんと後ろに吹き飛ばされていく。



 少しくらい人がいるのかなと思っていたら、意外にもそれらしい姿は全く見当たらなかった。
浜に打ち寄せる海の音だけが支配する静寂の中、プロデューサーはよりにもよって「路上駐車禁止!」の看板の目の前に車を止めてトランクを開ける。
一足先に浜辺に降りた伊織は歌い疲れた肺一杯に3月の夜の潮風を吸い込む。記憶にあるあの日よりも少しだけ暗くなった海の上には真ん円の月が雲ひとつない夜空に精一杯の自己主張をしていた。
「伊織ー、寒くないかー」
 声に後ろを振り向くと、徳用袋丸出しの袋といつか見たバケツを持ったプロデューサーが浜辺に繋がる階段を下りてくるところだった。
すでに私服に着替えている伊織は寒さなど感じない。
大丈夫、とでかい声で伝えてやると、プロデューサーは伊織の傍まで歩み寄って湿った砂の上に袋を置いた。
「開けていい?」
「おお。俺水汲んでくる」
 そういうとプロデューサーは懐を漁り、ボックスの煙草の蓋を開けて中からライターを取り出した。
ん、と言って手渡されるライターは記憶にあるとおりの安物で、なんだか懐かしくなってしげしげとライターを眺めていたら、
「あれ、ひょっとしていおりんライターの使い方知らない?」
 視線をライターからプロデューサーの顔に移すと、プロデューサーは実にいやらしい顔でニヤニヤしていた。
プ、と笑い声が漏れ、伊織はあの日と同じようにライターの打ち石と要石をこすってみせる。
 あの日と同じように弱々しい火花を散らしたライターはしかし、見違えるほど大きな火柱を立てた。
「先やってていいぞ。あーでも、ロケットは勘弁な」
「的が大きいと狙いやすくていいのよね」
 割と本気でそう言ってやると、プロデューサーはへらへら笑いながら背中を向けた。
その無防備さに毒気を抜かれ、伊織は足もとに置かれたくせに高さは腰くらいまである徳用丸出しの袋を開ける。
 夥しいまでの打ち上げ花火が入っている。

 打ち上げ花火の山を切り崩して手持ち花火を見つけると、伊織は黙って着火部の和紙に火を付けた。
するすると燃えだすところを見るとプロデューサーは結構管理に気を使ったらしい。
そうこうするうちに炎は着火部の先端に到達、油断していた伊織はストロンチウムの赤紫に視界を焼かれて顔を背ける。
目が潰れるかと思っていると、すぐ近くからわははははははと不遜丸出しの声が聞こえた。
「何やってんだいおりん、花火で失明してたら世話ねえぞ」
「うっさいわね笑ってないで心配したらどうなの!?」
「おい伊織、大丈夫か!? 眼科行くか!?」
 突然で強烈な光源に焼かれた目を開けると、涙で滲んだ視界にプロデューサーの笑顔があった。
ムカつく。伊織はこのおと言って花火の先端をプロデューサーに向け、プロデューサーは実に派手な動作で火から逃れようと身を捻る。
「だからお前先向けんなって! マジ洒落んなんねえっつの!」
 知ったことか。
伊織は思い切り瞬きをして網膜を保護していた水滴を振り払い、とても子供には見せられない邪気満載の笑顔をプロデューサーに向ける。
ひええと言って背を向けるプロデューサーが実に面白い。伊織は追いかけようと足に力を込め、

止めた。

 プロデューサーが伊織から5メートルほど離れたところで、伊織はおもむろにライターをプロデューサーの背に投げる。
背中に当たったライターの衝撃にプロデューサーは振り返り、
「何だ、追っかけてこないのか」
 声が、ほんの少しだけ寂しそうに聞こえた。
「あんまり私の事怒らせない方がいいわよ。私は、―――」
 伊織はそこで、握った花火から盛大に噴き出す炎を見た。
「あんたが『世界』のどこにいたって、ちゃんと見つけられるんだからね」
 ちゃんと、笑って言えたと思う。



 何本かの花火に火を付けてビームサーベルを振り回し、ねずみ花火と言う名前の高性能な追尾型爆雷をプロデューサーの足もとに放ち、袋の底から次々と発掘される線香花火を15本ずつ束にして火をつけるという虐待まがいの遊び方をした。
大して遊んでいないような気もしたが、プロデューサーの手を掴んで見た時計の針はもうすぐ日付が変わることを示している。
真っ暗な浜辺の光源はもはや伊織の手の中の花火と道路沿いに立つ街灯と自己主張する月明かりだけで、まるで世界に誰もいないようだと思い、伊織はそこでぶんぶんと首を振った。
「眠いか?」
 声に顔を上げると、プロデューサーがまるで俗世からの解脱を図る坊主のような手の合わせ方で何かをより合わせている。
「また作ってるの?」
「ああ。袋の中見たろ。今日はあれを連結する」
 あれ、と言うのは最初に見た打ち上げの事だろうか。
見ているだけはつまらない、とばかりに伊織もプロデューサーの足もとに落ちていた和紙の束を拾い上げ、プロデューサーに倣って掌をこすり合わせる。
年季の技ともいうべきか伊織が1本仕上げるまでにプロデューサーは3本ほどの「起爆用延長ケーブル」を作り上げており、これならば確かにプロデューサーが明日にでも赤軍系の反政府組織にスカウトされてもおかしくはないと伊織は半ば本気で思う。
「伊織が作ってるので6本目だから、」
 一体何本作る気なのか、プロデューサーは再びかがんで紙束を適当に鷲掴みにして再び仏門に帰依し出した。
「何本作るつもり?」
「んー、まあ10本くらいかな。言ったろ、今日のは派手だ。あの時は4つだけだったからな」

―――…綺麗なタオルね。
―――どうせなら綺麗な方がいいだろ。もうちょっとやるか?

「4つでも十分よ。綺麗だったし」
「何よりだ。でも―――…次の夏の花火の約束、できそうにないからな」

―――いや、湿気っちまうと勿体ないから降ろしてある。花火やりたい?
―――今度またやりましょうよ。ちゃんと夏に。そうね、夏の夕方がいいわ。仕事の帰りに浴衣に着替えて、どこか誰もいない浜辺に行って。

 伊織は目を瞑る。ほんの少しだけ目の裏が熱くなったように感じて、我ながら女々しいとは思う。
もうプロデューサーがどこに行ったってよかったはずなのに、プロデューサーがどこに行ったって見つけてみせると息巻いているくせに、改めてそう言われるとどうしても目の奥が熱くなってしまう。
「私のセコンドが終わったら…アンタ、何やってるの?」
「人間」
 脛に向けた鋭いローキック、大して痛くもなさそうな「いてぇ」という声、
「伊織の活躍を見てな、何人かアイドル候補生が入ったんだ。たぶん、しばらくはその子たちのプロデュース受け持つことになる」
「そう」
 それだけを言い、伊織は熱くなった目頭から意識を背けるように延長ケーブルをより合わせる作業に戻る。
プロデューサーもそれ以上何を言う事もなく延長ケーブル作成の作業を黙々と続け、あっという間に10本もの「起爆用延長ケーブル」が出来上がる。
「伊織、手伝ってくれ」
 プロデューサーの声に伊織は顔をあげ、すぐ足もとに会った徳用花火セットからいくつかの打ち上げ花火を取り出した。
よくよく見れば打ち上げ以外にも夏の残滓と思しき噴出花火がいくつか混じっていて、伊織は意図的に噴出花火を選りわけてプロデューサーに渡して花火の胴体にセロハンテープでくっ付いた緑の導火線をぺりぺりと剥がし始める。
「―――新人の子たちって、どんな子?」
「んー、どんな子って言われても俺も履歴書見たっきりだから何とも。社長の選眼だから度胸の座った連中なのは確かだな」

―――…しかし、あのジャジャ馬がAランクか。君も働くね。
―――ジャジャ馬って。社長、伊織はそんなじゃないですよ。

「私みたいな?」
「俺ぁ伊織みたいなのは伊織だけでいいや。お腹一杯」
 顔を上げると、プロデューサーがイタズラ好きな子供のような顔をしていた。
 溜息。
「そう。私も同情するわ、アンタみたいな変態に受け持たれる子はお先真っ暗ね」
「かもな」
 そう言うと、プロデューサーはさも可笑しそうにイヒヒヒヒと笑いだした。伊織もまたそれに釣られるように笑う。
妨げるものは何もない3月の夜の浜辺で、プロデューサーと伊織の笑い声だけが月に照らされながらいつまでも続く。



 延長ケーブルによって引き伸ばされた設置型花火と打ち上げ型花火は一直線に並べられた。
こんなもんか、と言いながら戻ってきたプロデューサーは懐を漁って煙草に火をつけ、伊織に向けてライターを投げる。
 これをつけたら、いよいよプロデューサーは「世界」に帰るのだと思う。
「どうした、付けないのか?」
「付ける前に、聞いていい?」
「おお。今日のパンツは何と星条旗だ」
「―――あんたにとって、私は、1と0のどっち?」
 薄明かりの中で見たプロデューサーの顔は、穏やかに笑っていた。

―――1、だ。

「聞きたい?」
 黙って頷くと、プロデューサーはがりがりと頭を掻いて真っ暗な空を見上げて紫煙を垂れ流した。
伊織は回答を急かすようにライターを付けて捻り合わされた延長ケーブルの先端に火をつける。
何の躊躇いもなく炎は延長ケーブルのそれぞれに引火し、するすると燃える和紙を辿って夕闇の中に消えていく。
「―――俺は、お前でよかったよ」
 炎が、猛る。
 プロデューサーが言葉を発した瞬間、ぽん、という情けない音を立てて打ち上げが空を舞った。
まるで日輪のような明るさを持った火玉が夜空を飛び、次の瞬間には派手な音を立てて一瞬の仕事を終える。
が、花火はまだまだ死なない。腹の中にため込んだ火種を次々と燃やして空へと飛び跳ねて行く日玉が、伊織とプロデューサーの顔を色とりどりの光で照らしだす。
「伊織は?」
「私は―――」
 炎が、猛る。
 伊織が口を開いた瞬間、打ち上げから一歩だけ遅れて噴出花火が盛大な火花を吹いた。
まるで光のカーテンのような火花が散り出し、隣接する打ち上げの胴体を照らしだす。
海の近くに設置した花火は水面に映りながらその使命を果たしだし、今や伊織とプロデューサーしかいない浜辺はまるで祭りの最後を思わせる景色だった。
「―――…ねえ、」
 この気持ちは、一体いつからだったのだろう。
「ん?」
「アンタ、来年もプロデューサーなのよね」
 あの昼間に駐車場で「世界」を見た時は、もう間違いなくこの気持ちはあったと思う。
「ああ」
「私、来年もアイドルやるわ。あんたがまた私の担当になるまで、私はずっとアイドルやり続ける」
 夜に「世界」を見せてくれた時からだっただろうか。
「そうか」
「うん。テレビにもたくさん出るわ。CDもたくさん出すし、新曲もばんばん歌うわ」
 それとも、10月の夜にタオルを投げてくれた時だっただろうか。
「ちゃんと見るよ」
「絶対よ。仕事忙しかったとか、言い訳は一切認めないからね」
「分かってる」
「アンタがどこにいたって私が見えるようにしてやるんだから。覚悟してなさい、来年からは飛ばしていくわよ」

 その時、特大の打ち上げが空を舞った。
真っ白な光を放って空に放り投げられた日玉は一気に拡散し、大きな音を立てて火花を夜空にまき散らしていく。
どこにいても見えそうなまでの大きさのその花火に、伊織は己の姿を思う。

 そうだ、
 私は花火になろう。
プロデューサーがどこにいても見える、大きくて明るい花火になろう。
いつかプロデューサーが「世界」から戻ってくるときに、プロデューサーが帰ってくる場所がはっきりと分かるような、大きな大きな花火になろう。
 プロデューサーがいるべきなのは、「世界」でも、新人の子たちの所でもない、水瀬伊織の横なのだとはっきり分かるような、そんな明るい花火になろう。

「―――私のところに、帰ってくるのよ。絶対。何があっても」
「―――ああ」
「他の子のプロデュースが終わったら、あんたはまた私のプロデューサーをやるの。当たり前でしょ、アンタみたいな変態とちゃんと付き合えるのは私くらいなものなんだから」
 プロデューサーは一度だけ伊織の顔を見て、本当に静かに、少しだけ寂しそうに、少しだけ嬉しそうに「そうだな」と言う。
「それで、今度は今年よりももっともっと高い所に行くの。日本だけじゃなくて、世界中色んな所回って、『水瀬伊織はここにいる』って世界中に知らしめるのよ」
 伊織はプロデューサーを見ない。
ただひたすらに打ちあがる花火を見ている。
花火の足もとからは夥しいまでの光の滝が夜の浜辺に降り注ぎ、日中と見紛うまでの光が伊織とプロデューサーを照らしている。
「楽しそうだな」
「そう思うでしょ。私もそう思う。絶対楽しいわよ、アンタと私で世界中回って、いろんな景色を見て回って、ずっと、ずーっと、一緒に、」

 その時、小さな花火がぽすんと上がった。それきり花火の胴体は沈黙し、今までの音の反動のような無音が浜辺を襲う。
まるであの時のステージのように音のなくなった浜辺に、プロデューサーの腕時計がかちりと動く。

 日付が、変わった。

 長かったような、短かったような1年が、何もかもを手に入れてやろうと息巻いた1年が、何も手に入らないのかと落ち込んだ1年が、
 プロデューサーと過ごした1年が、
 今ようやく、終わりを迎えた。

「伊織、」
 声に、伊織は初めてプロデューサーを見る。
そこにあるプロデューサーの顔を見て伊織は笑顔を浮かべ、月以外には何もない夜空を見上げる。
 プロデューサーが、実に誇らしく笑っている。
「―――ありがとな」
 プロデューサーの感謝の言葉に、伊織は己の心を思う。

 私は、この気持ちの正体を知っている。

 瞬間、月しかなかった夜空に太陽が生まれた。
どかん、という派手な爆発音を立てて花火が一斉に息を吹き返し、夜空のキャンバスに満開の花を散らせる。
伊織はその光景に目を奪われ、再び鳴り出した派手な炸裂音に照らされるままに色とりどりの太陽を見上げる。

 そうとも、私はこの気持ちの正体を知っている。

 降り注ぐ花火の残滓に照らされながら、伊織はこの1年を思い出す。
最初はたぶん絶望からのスタートだったと思う。
途中からプロデューサーがいればそれでいいと思い、あの夜に何もかもを手に入れたことを知り、プロデューサーのいない「世界」なんていらないと思い、結局「プロデューサー」は世界に帰るのだと思う。

 そうとも。
 私は、この気持ちの名前を知っている。

 思い出す1年には、いつもプロデューサーの笑顔がある。
いつも、プロデューサーに支えられていたのだと思う。
 伊織は息を吸う。
思い出の中にプロデューサーの笑顔がある。いつだって支えてくれたプロデューサーは、伊織が作った「世界」に帰る。
 それが途方もなく喜ばしく、途方もなく切なく、途方もなく嬉しく、途方もなく悲しく、

 それが、途方もなく誇らしかった。

 肺が臨界点を超える。
これで全部終わるのだと思う。
途方もない気持ちと伊織の心の奥底にくすぶる気持ちは綯い交ぜとなって口元に集まり、
 伊織は、「世界」に己の心を知らしめるように、
 叫ぶ、

「わあああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 真ん円の満月の下、「世界」を照らす人工の太陽の下、伊織はあらん限りの声を振り絞って叫び続ける。
叫び出した途端に視界がぼやける。
伊織は声を止めない。裏返った喉に叫び声が邪魔され、ぼやけた視界に映る太陽を一度だけ見て目を瞑り、伊織はただ叫び続ける。

「世界」に響く声が、浜辺にいつまでも響き続ける。



 私は、この気持ちの名前を知っている。
 あいつは私の作り出した「世界」に帰る。
それはとても寂しくて、それはとても嬉しくて、だけど少しだけ悲しくて、しかし途方もなく誇らしい。
 ひょっとしたら違うのかもしれない。人は違うと言うかもしれない。
 でも、それでも構わない。
 叫ばなければならないほど胸の中で大きくなったこの気持ちを、
悲しくて切なくて、嬉しくて誇らしくて、途方もなく暖かなこの気持ちを、


 私は、恋と呼ぼう。




SS置き場に戻る       ロストワンに戻る             その13へ   エピローグへ

inserted by FC2 system