声 (16)

 8月第1週である。
 寝覚めは最悪だったし朝飯用の食パンは切れていたし靴ひもは千切れたしおまけに出勤前に黒猫に前を横切られた。
IU2次予選の朝だというのに幸先の悪い出だしだったが、しかし本番中の春香の様子は実に堂々たるものだった。
 IU1次予選に輪をかけたような堂々たる歌を披露した春香は今、2次予選から2部屋に分かれたアイドル用控室でプロデューサーが渡した緑茶を見ていて気持ちのいい勢いで喉に流し込んでいる。
よほど緊張したのかと思うが、果たして舞台で踊っていた緊張なのか、その後に行われた初めてのインタビューによるものかプロデューサーには判断しかねる。
右腕に通された緑字に黒の『765プロデュース株式会社』の腕章はそれでなくとも重く感じられるものだというのに。
プロデューサーは安堵半分心配半分の息を吐き、1次予選の時よりも人の出入りが激しい控室をぐるりと見回す。
 人の出入りが激しい、というのは2次予選からマスコミの取材が認められているからだ。
1次予選と比較した場合、2次予選はたかだかひとつ数が増えただけだというのに出演者のレベルはそれなりに上がる。
1次予選は芸能プロダクションに所属しているアイドルならば誰でも参加資格があるが故に、全体を通してみればそれほど高レベルの争いではない。
つまり1次予選は単純に広い入口に狭い出口が付いたいわばスタートラインであり、各予選の上位2枠を集めた2次予選に比べればレベルの差は推して知るべしである。
極論を言えば遊びでも出れてしまう1次予選と比べると、2次予選参加者の顔つきからはその本気度が透けて見えるようだった。
 なるほどそうして見れば、事の是非はとにかくとしても1次予選敗退者に者としてのバックアップを拒否するというのは仕方のない事なのかもしれない。
誰だって遊びと本気のどちらに投資するかといえば本気の方を取る。
「…それにしても、春香大丈夫? ちょっと飲みすぎじゃない?」
「だって、やっぱり緊張したんですもん。あんなにマスコミの方がいるとは思わなくて」
 やはり春香はマスコミの方に緊張したらしい。
本番はどうだったのかと聞きたい気もしたが、本番の春香の様子を見る限り緊張で練習の成果が出せなかったということはなさそうだ。
プロデューサーは今度こそ安堵のため息をつき、僕もちょっとびっくりした、と春香にへらりと返す。
 2次予選からは本格的にIU予選も選抜の色合いを濃くしていく。
同時に、1次によって遊びの連中が淘汰された予選はそこらの単発にも引けを取らない高レベルのオーディションとなる。
マスコミ各社にしてみれば将来の大スター候補たちの映像を今から落としておきたいというのはわからないでもないし、アイドルにしてみれば映像露出の機会が増えれば増えるほどファンの獲得可能性は高くなる。
両者いいとこ取りのこの発想は総会にも認められ、各マスコミ関係者はこれ幸いと本番を終えたアイドル達を控室で待ち構えて質問攻めにするのだ。
2次予選での春香の順位はあろうことかトップバッターであったがゆえに控室にいた記者たちの矛先はまず春香に向いてしまい、本番後に上気した頬で控室に戻ってきた春香とプロデューサーはここで実に様々な質問を受ける羽目になった。
「本番前のアイドルへのインタビューは禁止」というマスコミへの制限事項は今のところ遵守されているようだが、それもいつまで持つことやら、とプロデューサーはぼんやり思う。
 プロデューサーの腕に通された緑の腕章も単純にマスメディアへの対応の為だ。
春香を始めとしたアイドル達は顔が売れているから「どこのプロデュース会社の誰である」などと公言する必要は全くないのだが、事これがプロデューサーを始めとしたバックアップ陣になると顔も名前も全く知られていない事が大半である。
「どんな気持ちで歌ったのか」や「予選会を終えた感想はどうか」などといった質問はそれこそアイドルが答える質問だが、「今後『天海春香』をどのように売り出していくのか」や「新曲のプロモーションの発表時期はいつなのか」といった質問はアイドルよりもプロデューサーの方が回答者としては適任である。
何もかもをアイドルに答えさせるのはプロモーション計画的に非常によろしくないし、プロデューサーとしてはそれ以上に疲れの溜まっているであろう春香に鞭打つような真似はしたくないというのが本音だった。
幸い腕章のおかげかその手の質問はプロデューサーに集中し、途方もない数の質問攻めに愛想笑いのチャフとフレアをばら撒いて危険回避している間に2番手のアイドルが控室に戻ってきたことで質問会はお流れとなった。
IU本戦まではあと3回も予選会がある。毎回これでは身が持たないような気はしなくもない。
「でもさ、『天海春香』を売り込むためだもんね。多少は我慢しなきゃ」
「そうですね」
 春香の笑顔に笑顔でうなずき、プロデューサーは一息ついて鞄から本日の出席者リストを取り出した。
 IU予選は基本的に1日かけて行われ、午前中に2人、午後に残りの4人が審査される仕組みだ。
今さっき戻ってきたアイドルは本日2組目のアイドルのはずだから、午前中はこれ以上の審査はないことになる。
発表は6人目のアイドルの審査が終わってからだから4時過ぎくらいになるはずだが、出演を終えたアイドルは発表までは何をしていてもいい事になっている。
それこそ表で昼食を取るくらいなら何のお咎めもないし、胡散臭さ満点の傍聴席でほかのアイドルの研究をしてもいい。
「そろそろ昼飯でも食べようか。春香、何が食べたい?」
「午後に間に合うなら何でもいいですよ。…あ、じゃあ満点堂のパフェが食べたいです!」
「春香、世界には体重計という非常に素晴らしい発明品がだね」
 膨らんだ春香にあきれ顔で返し、プロデューサーは鞄に出演者のリストを仕舞った。
が、春香としてもおそらく午後一の出演者をその目で見ておきたいという願望はあるのだろう。
 今日の主目的は言うまでもなく2次予選の突破だが、この分で行くと春香もまたプロデューサーのもう一つの目的を己の目的としているのかもしれない。
『四条貴音』の出演は、今日の午後一だ。
「気になる? 『四条貴音』」
 気になりますと顔に書いてあった。
「だって、1次の時あんなこと言われたんですもん。一度この目で見なきゃですよ」

―――誰でもない『みんな』など存在し得ません。貴女は夢を見ている。

 なるほど、1次予選後の廊下で言われた一言は春香を刺激するに十分だったらしい。
その目には「負けてなるものか」と書いてあり、プロデューサーは頼もしさを感じると同時に少しだけ引け目を感じた。

―――大江様に言われるまま意識してしまった私が愚かなのかもしれません。

 本番中にプロデューサーが傍聴席の後ろ側で春香にアピールポイントを送ったように、『四条貴音』のプロモーターもまたアピール信号を送るはずだ。
それを見ればすっきりするはずだ、とプロデューサーは思う。
『四条貴音』の言う『大江』とやらがどんな顔をしているのかこの目で見ない事にはどうにもすっきりしない。
現時点での『四条貴音』の実力も気になるが、プロデューサーとしてはどうしてもそれが気になって仕方がない。
「そうだね。あんなこと言われて黙って引き下がったんじゃ負けたも同然だ」
「そうですよ。絶対負けません。私を応援してくれる『みんな』はちゃんといるんです。言われっぱなしは嫌ですから」
 何にしろ春香のモチベーションを高めてくれるならいい事だ。
やる気を漲らせるかのようにプロデューサーの前で拳を握った春香に一度頷き、
「まあ、何をやるにしろ腹が減ったら戦もできないからね。昼飯食べてこよう、何がいい?」
「満点堂のパフェがいいです!」
 まだ言うか。



 満点堂の前で捨てられた子犬のような眼をした春香を意志の力で引っ張ってラーメン屋に連れ込み、醤油ラーメンとチャーハンを注文して腹の中に収め、戻ってきたころには時計の針は13時15分を指していた。
間もなく『四条貴音』の舞台が始まるからなのか傍聴席の込み具合はすさまじいの一言に尽きる。
確かに『四条貴音』の今までのプロモーションは辣腕の一言に尽きるのは認めざるを得なかったのかもしれない。
 二人並んでは座れないかもしれないと思ったが、どうやら傍聴席には出席者に割り当てられた予約席があるらしい。
これでポップコーンでもあれば完全に映画館のようではあるが、しかし今の春香にポップコーンなど持たせようものなら製造過程を再現するような気がした。
「春香が緊張することないじゃないか。もう春香の番は終わったんだし」
「あ、あはは、そうですよね」
 やだ何緊張してるんだろう私と呟く春香の両肩はがたがたと震えている。
気持ちは分からなくもない、「負けてなるものか」と瞳に浮かべた春香にしてみればこれから始まる『四条貴音』のステージは敵のお披露目に他ならない。
『四条貴音』の歌は何度か春香に聞かせてはいるものの、やはりCDと生音では感じ方も違う。
こんなところで戦意喪失にならなければいいが、とプロデューサーは若干の不安を覚える。
「気にするなって方が無理だとは思うけどさ」
「プロデューサーさんも、気になります?」
「…春香の壁は、僕の壁でもあるからね」
 春香の瞳に疑問の色が浮かんだ。プロデューサーはあれと苦笑して、
「言ったでしょ、僕は春香のプロデューサーだって。春香がトップに立つために僕がいるんだし、そのために越えなきゃならない壁があるんなら土台作るのが僕の仕事」
 春香の震えが小さくなった。
「土台、ですか」
「うん。壁がどのくらいの高さなのか見ておかないと。どんな風に土台作っていいか分からないし、膝上くらいの高さしかないんなら跨げばいいだけの話だし」
「膝上くらいの高さじゃないことだけは確かですね」
 そうだね、と苦笑を洩らす。
『四条貴音』の卓越した歌唱力はCDからも十分に感じ取ることができた。
あのレベルの歌を歌うアイドルがまさか膝上くらいの高さでしかないことなど万に一つもあり得ないが、しかしだからこそプロデューサーがいるのだと言えばまさしくその通りだ。
「でも、だからこそ挑戦のし甲斐がある。でしょ?」
「…そうですね。目標は高く、」
「自分らしく、ね。『四条貴音』と『天海春香』を単純に比較なんかできないんだし、する必要もない。春香は春香のままでいいんだ、ありのままで勝負すればいい」
 春香の瞳に意地の悪い笑みが浮かんだ。
「それで壁に突き当たったら?」
 ため息ついでに苦笑を洩らし、プロデューサーは春香の顔を見て口を開いた。
「ありのままの春香が壁に当たったら、ありのままの春香が壁を乗り越えられるように土台を作るのが僕の仕事。任せてよ、これでも1年間シゴかれてきたんだ。そこらのプロデューサーにゃ負けないさ」
 春香の震えは、完全に止まっていた。
「えへへ、お願いしますね、プロデューサーさん」
 そうだ。
 そんじょそこらのプロデューサーなどに営業で引けを取るつもりなどこれっぽっちもない。
こちとら若輩の怖いもの知らずだ、どこにだって営業くらいしに行くし、例えどれほど壁が高かろうとこちらには途方もない土台があるのだ。

 大江に学んだ1年間という、途方もなく盤石な土台があるのだ。

 同じ名前の寸足らずがどんなプロモーションをしてこようが負ける気などありはしない。
ここで自分が負けるのなら、それは大江の教えが不十分だったということに他ならない。
そんなことはあり得ない。自分の追いかけてきた「プロデューサー」が、自分の目標が、あの背中が負けることなど億に一つもあり得はしない。
重機だろうがミサイルだろうが持って来いと思う、そんな物で壊せるなら壊してみろとすら思う、
 その時、会場の照明が落ちた。
 ばち、というブレーカーが落ちた時のような音がして会場が闇に包まれる。
ところどころにぼんやりとした明かりがついているのは携帯電話を開いているスカポンタンがいるからで、それすらも10秒と経たずに薄暗い闇に飲まれて消えた。
後ろを振り返ると審査員席だけがスタンドに照らされて光源のない会場でぼんやりと光を放っており、そのままぐるりと見回した会場内に立っていると思しき人影は一つも見当たらなかった。
 いよいよだ、と思う。
 いよいよ『大江』の皮を被ったプロデューサーの化けの皮を剥がしてやる瞬間が来たと思う。
 自分にとって『大江』は一人しかいないのだ。天海春香が一人しかいないようにだ。
どこの馬鹿がどの面を下げて『大江』を名乗っているかは知らないが、これで碌でもないようなプロデューサーならば歯牙にもかけずに次のステップに進んでやるとすら思う。
 やがて緞帳の上がる音がして、ヒールがステージの木板を踏むカツカツという音が聞こえてきた。
視界の隅でステージに火が灯る、プロデューサーはまるでステージに興味がないかのように一瞥たりともステージを見ない、会場の後ろの方に視線を飛ばして偽物の影をその目で捉えようとしているかのような目はまるで猛禽を思わせ、イントロが掛かる、明らかにCDと思しき音が耳に入り、


おそらくは『四条貴音』のプロモーターと思しき男が立ち上がって





 ステージに立った貴音が息を吸った瞬間、春香の身を恐ろしいまでの衝撃が襲った。
まるでどこかの美術館にいるのではなかろうかと錯覚するほどに『四条貴音』は完璧だった。
立ち居振る舞いはもとより、その表情も、その瞳も、まるで立体彫刻が動き出したかと錯覚するほどに流麗だった。
 春香は弾かれたように眼を擦り、ここがIU2次予選の傍聴席で、貴音が立っているのが2次予選のステージだという事に今更のように思い至る。
 春香は改めて貴音の表情を見る。
その前に道はなく、その後ろにのみ道があり、まるで誰かを誘うかのようなその眼光には誰の姿が映っているのだろうか。
 掛けられたイントロに合わせるかのように、貴音の体が動き始めた。
先ほどまでの彫刻が嘘のような洗練された動きは一所も留まることがなく、どれか一か所を見せ場と特定することすら不可能にすら思える。
やがて激しいギターとドラムの応酬が始まり、貴音の体が躍動し始めた。
その動きは檄にして流、その表情はまるで修練の場を訪れた阿修羅の如く、
 そしてその声は、

♪ Thrillのない恋なんて 興味あるわけないじゃない ♪

 壁は高い方がいいと思っていた。その方が挑戦のし甲斐がある、そう思っていた。
 どんな壁だって乗り越えてみせる、と、そう思っていた。
 訂正する。
 世の中には乗り越えなれない壁も、あるのかもしれない。

♪ Tabooを冒せる奴は 危険な香り纏うのよ ♪

 貴音の歌は止まらない。
傍聴席を、審査員席を、マスコミ専用の縁の席を、天海春香を飲み込んで歌う貴音の声は途方もない風格に満ちている。
 『みんな』など存在しない、あの時貴音はそう言った。
確かにそうだと思う、春香を襲って止まないその歌はまるで、

―――ならば、来るべきIUで勝敗を決しましょう。貴女と私、どちらが覇道にふさわしいのか。

 これが貴音の考える覇道か、と春香は思う。
意識せずとも心に響く貴音の歌はまさしく1次予選の廊下で聞いた貴音の心を表わしているかのようだった。
誰にも頼らず、誰にも与えられず、ただひたすらに自分から与えようとするその姿勢は、

 まるで、孤独な王様を思わせた。

♪ 覚えておけば? ♪

 負けるわけにはいかない、と春香は思った。
『四条貴音』は凄い、春香は掛け値なしにそう思う。それでも負けるわけにはいかない。
 もし『四条貴音』の心の奥底に仕舞われた感情が春香の想像通りなら、この歌から聞き取れる感情そのものならば、何をおいても負けるわけにはいかない。
歌い踊る貴音の声から読み取れるその感情は、あまりにも孤高で、あまりにも気高く、そしてあまりにも寂しかった。
 春香の眼に映る『四条貴音』は、この世に降り立った孤独の姿に思えた。
 そんなのない、と春香は思う。これほどの歌を歌える人がこんなに寂しくていいわけがない、と思う。
 春香は思う。
 世の中には乗り越えることなど到底できそうにない壁がある。
 だが同じように、世の中には絶対に越えなければならない壁もまたある。
『天海春香』にとっての『四条貴音』は、まさしくその類の壁であるに違いなかった。
 勝算があるかと言われれば可能性は低いと言わざるを得ない。
現段階において『天海春香』が『四条貴音』を超えるために何をすべきか、という基本的なスキルアップの方向性すら分からない。
分からないがしかし、『四条貴音』の歌から聞き取れるその感情が貴音の現状を表すのであれば、『天海春香』は決して『四条貴音』に引けを取らない強力無比な協力者がいる。

―――ありのままの春香が壁に当たったら、ありのままの春香が壁を乗り越えられるように土台を作るのが僕の仕事。

 プロデューサーはそう言ってくれた。
そう言われただけで体の震えが吹き飛んだ。
何が何でもやってやろう、という気にすらなった。
どれ程壁が高かろうと、どれ程自分が足りなかろうと、どれ程『四条貴音』と差があろうといつか必ず乗り越えられると思う。
そんなプロデューサーが自分のそばにいてくれるのだ、負けることなど絶対に、

 そこで、春香はようやくプロデューサーの異変に気がついた。

 プロデューサーがステージを見ていない。
審査員席の方に首を向けたまま、まるで時間を止めてしまったかのように静止している。
春香の席から審査員席はちょうどプロデューサーの頭が影になって見えず、春香は貴音の動きに後ろ髪を引かれながら少しだけ首を動かして審査員席を視野におさめる。

 黒色の腕章を付けた男が立っていた。

 ちょうど審査員席の後ろにいるからなのか、審査員の手元を照らすスタンドの光が男の顔に当たっていた。
男はだらりと腕を垂らしていて、時折頷くような仕草を見せている。
あの席は確か自分がステージにいたときにプロデューサーがいた場所だ。
ということは、あの男が『四条貴音』のプロモーターなのだろうか。
「…プロデューサーさん?」
 小声でプロデューサーに話しかけるが、プロデューサーはぴくりとも動かない。まるで金縛りにあったかのようだ。
ひじ掛けに乗せられたプロデューサーの腕を揺すってみるが、これにもやはり反応はない。
そうこうする内に再び貴音が歌い出し、春香は器用にも貴音と男に注意を分散させてプロデューサーの反応を伺ってみる。
 視界の奥で、男が下げていた腕を上げた。
大きく空中に丸を描いたその腕の先には貴音がおり、男が丸を描ききったところで耳に入る貴音の声は突然大きくなった。
間違いない、あの男は『四条貴音』のプロモーターだ―――そう思った瞬間、プロデューサーの腕が身じろぎする。
 やっとこっちに気付いたらしい、そう思った春香の耳に、貴音の声に紛れたプロデューサーの声が聞こえた。

 なんでだ、大江さん。

 春香の耳には、そう聞こえた。




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